「この世界の片隅に」について
この世界の片隅に
第40回 日本アカデミー最優秀アニメーション作品賞受賞作品
こうの史代の出世作となった『夕凪の街 桜の国』に続いて「戦争と広島」をテーマに描いた作品である(ただし『夕凪の街 桜の国』と異なり、主要な舞台は広島市ではなく近隣の軍港・呉に設定されている)。2006年初めから翌2007年初めにかけて発表した戦前期(1930年代)の広島を描いた3編の読み切り短編作品『冬の記憶』『大潮の頃』『波のうさぎ』(いずれも主人公・浦野すずの幼少時がテーマとなっている)に続いて、『漫画アクション』誌上に本作の連載が開始されることになり、2008年1月にはコミックス単行本(上巻)が刊行された。こうのにとっては通算7本目の単行本化作品となる。本作品のストーリー本編は1943年(昭和18年)12月、すずが周作と出会い翌年2月に2人が祝言を挙げるところから始まるが、コミックス化に際して上記の3編も本編のプロローグ部分として上巻に同時収録された(目次の配列はストーリー上の時系列に沿っている)。初出掲載時とコミックスでは、各回ごとに(「18年12月」というように)昭和元号により舞台となる時期(年・月)を示すサブタイトルが付されている(ただしプロローグの3編については初出時に時期設定が明示されていなかったため、コミックス収録時に新たに付された)。また、初出掲載時は「昭和」と「平成」の元号を介して年月が一致するように連載されていた(例:作中が昭和20年3月の場合、平成20年3月発行の誌上に掲載)。登場人物は元素の周期表を参考に名付けられている(例:すず=スズ、周作=臭素)。フランスで『Dans un recoin de ce monde』、台湾で『謝謝?, 在這世界的一隅找到我』として刊行されている。英語版は存在しないが、『In This Corner of the World』という英語題名が原作漫画・アニメーション映画版に共通のものとして設定されている。1944年(昭和19年)2月、絵を描くことが得意な少女浦野すずは、広島市江波から呉の北條周作のもとに嫁ぐ。戦況の悪化で配給物資が次第に不足していく中、すずは小姑の黒村径子の小言に耐えつつ、ささやかな暮らしを不器用ながらも懸命に守っていく。しかし、軍港の街である呉は1945年(昭和20年)3月19日を境に、頻繁に空襲を受けるようになる。同年6月22日の空襲で、通常爆弾に混ぜて投下されていた時限爆弾(地雷弾)の爆発により、すずは姪の黒村晴美の命と、自らの右手を失う。意識が戻ったすずは径子に責められる。同年7月1日の空襲では呉市街地が焼け野原となり、郊外にある北條家にも焼夷弾が落下した。見舞いにきた妹のすみは、江波のお祭りの日に実家に帰ってくるように誘う。その当日である8月6日の朝、径子はすずと和解し、すずは北條家に残ることを決意する。その直後に広島市への原子爆弾投下により、爆心地から約20キロメートル離れた北條家でも閃光と衝撃波が響き、広島方面からあがる巨大な雲を目撃する。8月15日、ラジオで終戦の詔勅を聞いたすずは家を飛び出し泣き崩れる。翌年1月、すずはようやく広島市内に入り、草津にある祖母の家に身を寄せていたすみと再会。両親は既に亡くなっており、すみには原爆症の症状が出ていた。廃墟となった市内で、すずはこの世界の片隅で自分を見つけてくれた周作に感謝しながら、戦災孤児の少女を連れて呉の北條家に戻った。
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